すっぽんに含まれる良質な脂肪酸

日本人の食事が欧米化した現代、高カロリー、高脂肪食が増え、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病にかかる人の割合が年々高まっています。動物性食品には脂肪酸が含まれています。体に良いといわれるすっぽんにはどんな脂肪酸が含まれているのでしょうか。

すっぽんは悪玉コレステロールを減らす不飽和脂肪酸を多く含む

三大栄養素のひとつである脂質の成分は脂肪酸です。脂肪酸は化学的な構造の違いにより飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。不飽和脂肪酸はさらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。

すっぽんは不飽和脂肪酸を多く含みます。不飽和脂肪酸は血中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。日本食品標準成分表2015版によると、すっぽん100gあたりに含まれる脂肪酸の量は次のとおりです。

脂肪酸の種類 すっぽん100gあたりの含有量
飽和脂肪酸 2.66g
不飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 5.43g
多価不飽和脂肪酸 3.36g

すっぽんに含まれる脂肪酸の働きと特徴

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は肉や乳製品の脂肪に多く含まれ、摂り過ぎると中性脂肪や悪玉コレステロールが増え、肥満や動脈硬化の原因になります。とはいえ、摂取量が少なすぎても脳出血の原因になるのです。牛肉に含まれる飽和脂肪酸の量は100gあたり7.12g、豚肉では9.23gなので、すっぽんに含まれる飽和脂肪酸の量は他の肉に比べてかなり少ないことがわかります。現代の日本人は飽和脂肪酸を過剰に摂取しやすい傾向にあるため、豚肉や牛肉の代わりにすっぽんを食べると、飽和脂肪酸の摂取量を抑えることができます。

厚生労働省は2010年版の日本人の食事摂取基準で、飽和脂肪酸の摂取目標量の下限を18歳以上で1日の総エネルギーの4.5%以上、上限を7.0%未満としています。たとえば、1日に2000kcalを摂取すると、飽和脂肪酸の上限は15.5gが望ましいということです。すっぽん100g当たりに含まれる飽和脂肪酸は2.66gですので、仮にすっぽんを100g食べた場合、残りの約13gは他の食材から摂取できる計算になります。すっぽんなら100gを食べても、上限値に達するまで、まだかなりの余裕があるというわけです。ただ、厚生労働省によると、この目標量は個人の代謝の特性が考慮されていないということなので、参考程度の数値とみなしましょう。

不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸

すっぽんに含まれる一価不飽和脂肪酸にはパルミトレイン酸、イコセン酸、ドコセン酸、ヘプタデセン酸、テトラコセン酸、ミリストレイン酸があります。悪玉コレステロールを減らし、高血圧や心臓病を予防、改善する効果が期待できます。

多価不飽和脂肪酸

すっぽんに多く含まれる不飽和脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸には化学構造の違うn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸があります。

n-3系脂肪酸には植物油に多く含まれているα-リノレン酸、青魚に多く含まれるEPAやDHAなどがあり、すっぽんにも含まれています。中性脂肪値や悪玉コレステロール値を下げ、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、脂質異常症を改善し、生活習慣病の予防が期待できます。

n-6系脂肪酸にはリノール酸があります。こちらも中性脂肪や悪玉コレステロールを低下させる働きがありますが、過剰に摂取すると善玉コレステロールまで低下させてしまうという欠点があります。すっぽんに含まれるn-6系脂肪酸はリノール酸の他、アラキドン酸、イコサジエン酸があります。

α-リノレン酸、リノール酸は体内では合成されず、食物から摂取する必要があり、必須脂肪酸と呼ばれます。必須脂肪酸が不足すると発育の遅れや皮膚が固く角質化してしまうなどの症状が出ます。

バランスの良いすっぽんの脂肪酸

脂肪酸はバランスがとても大切です。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の割合は3:4:3が理想とされています。その点、これらの脂肪酸をバランスよく含むすっぽんは低カロリーでもあり、生活習慣病の予防と改善におすすめです。

まとめ

現代の欧米型の食生活では、高脂肪の肉や乳製品を多く食べるため、飽和脂肪酸の摂取量が多くなりがちです。飽和脂肪酸の摂り過ぎは、肥満や動脈硬化を引き起こす可能性を高めます。

すっぽんは動物性であるにもかかわらず、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、生活習慣病を予防する働きのある不飽和脂肪酸を多く含んでいます。

高脂肪、高カロリーの食事にかたよりがちな人は、すっぽんで生活習慣病の予防と改善に努めましょう。

効果・成分・危険性・相性